飲食店の破産の特殊性

飲食店の破産について

 本日令和2年4月17日現在,新型コロナウイルスによる感染症拡大により,全国に緊急事態宣言が出されています。
 先日も当コラムで述べさせていただきましたが,これにより最も影響を受ける事業者の一つとして飲食店が挙げられます。
 当事務所の周辺の飲食店も,テイクアウトを行って売り上げ減に歯止めをかけようとしたり,または臨時休業をすることで支出の削減を試みたりと,厳しい戦いを続けておられます。前にも述べましたが,私(弁護士高山)は,飲食店は社会のインフラであると考えておりますので,何としてもこの難局を乗り越えていただきたいと考えております。
 もっとも,従前より経営状況が悪く,債務の返済猶予を受けておられるような飲食店については,日本政策金融公庫の新型コロナウイル感染症特別融資もおりにくい状況と聞いており,当事務所でも現在,資金繰りに窮した飲食店の方の破産の相談を多数受けております。
 この資金繰りに窮した飲食店の破産の場合,最も困るのが破産費用です。

飲食店の破産費用

 法人の破産申立にあたっては,会社の規模,債権者数にもよりますが,概ね100万円から150万円程度は必要となります。
 他の業種(製造業など)であれば,収入サイトが月末締め翌月末支払いであることが多いので,例えば今月末に買掛金の支払い資金がショートとなっても,翌月末に今月末までの売掛金の入金が見込まれるため,その売掛金を確保して,破産費用に充てることができます。
 しかし,飲食店の場合,収入の多くは現金,または15日毎に入金のあるクレジットカードであるため,飲食店の資金ショートは,「破産費用もない」資金ショートとなる可能性があります。
 さらに,破産費用の確保に困る理由があります。他の業種ならば,製品在庫や原材料は破産にあたって販売してしまい,それを破産費用に充てることもよくあります。
 しかし,飲食店の場合,製品在庫は通常存在しません。原材料は食品であるため,賞味期限,出所の問題があるため,売却が困難です。そのため,製品在庫や原料を売却して破産費用に充てることは通常できません。
 また,他の業種なら,会社が業務に使用している設備,備品を破産にあたって売却することが考えられます。
 しかし,飲食店の厨房設備はリース物件であることが多いため,売却できず,さらに,現在のコロナ禍のため,新店舗オープンによる需要が乏しく,厨房設備の中古市場相場が大きく下落しております。そのため,設備,備品の売却を行い,破産費用を捻出することも難しい状況です。
 そして,飲食店の破産においてさらに悩ましいのが人件費です。飲食店の運営にはアルバイトをはじめ人員の確保が必要な場合がしばしばあります。開店している以上は勤務してもらうわけですから,賃金の支払いが必要となります。確かに,会社破産の場合は,賃金の支払いもできないことが全くないわけではありません。また,私も労働事件を会社側で多数担当しており,労働者と対峙すること,時には激しい言い合いになることもあります。しかし,当たり前のことながら,賃金は労働者の生活の資源であり,破産といえども,不払いの状態で破産の準備にはいるということは避けたいと考えております。
となると,飲食店の破産の場合,人件費の支払いを考えると,破産費用はますます厳しくなります。

まとめ

 以上のことに鑑みると,飲食店の破産を考える場合,なるべく早く,まだ費用や人件費が支払えるうちに,破産を検討することが重要であると考えております。
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