質問
私は運送会社を経営しておりますが,経営が厳しく,金融機関への返済ができなくなってきました。最近,「会社分割をすれば企業の再生ができる」という話をよく聞きますが,可能でしょうか。
回答
書店などをのぞくと会社分割を使った企業再生について書かれた書籍を見かけます。
一般的に会社分割とは,会社の営業の一部または全部を元の会社の子会社に移して,子会社の名義と計算で従来の企業活動を続けるという手法です。以下では元の会社を「親会社」,会社分割によって誕生した会社を「子会社」としてご説明します。
会社分割をすると,会社分割前の債務はあくまで親会社の債務であって,別法人である子会社には及ばないのが原則です。したがって,会社分割をすれば,債権者らは子会社の資産から回収をすることができませんので,子会社に移転させた営業資産等を債権者の追及から守ることが考えられます。
しかし,実際は債務を逃れるためだけに優良な営業資産を子会社に移している場合がしばしば見られます。このような債権者を害する会社分割は,詐害行為取消権の対象となったり,子会社の法人格が否認され別会社であると認めてもらえないことがあります。債権者が詐害行為取消権等を行使し,これが裁判所に認められると,結局債権者は親会社のみならず子会社からの回収が可能となってしまい,会社分割を行った意義が失われてしまいます。
そのため,会社分割による企業再生を成功させるには,金融機関などの債権者の意向を確認しながら行うべきです。もっとも,金融機関は親会社の債務を全て子会社が引き継ぐよう求めることも多く,簡単にはできないのが現実です。
実現可能性が低いにもかかわらず会社分割を援助するなど広告し,高額なコンサル料を取るような悪徳業者の存在も耳にしますのでご注意ください。