概要
業種 | 印刷業 |
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従業員数 | 2名 |
負債総額 | 約4000円 |
債権者数 | 約15名 |
業績の悪化
取引先企業のパンフレットやカタログ、社史等や、宣伝広告用の大型印刷物の印刷・製作業務を行っていたが、事業を拡大するために全国に支店を広げたところ、想定した売上が上がらず、支店の設備投資のための融資金の返済が重荷となった。新型コロナウイルス感染症の影響で各企業が一斉に経費を削減したことから、さらに売り上げが減少したことで、代表者が廃業を決意した。
処理の内容
事業用の印刷機械がいずれも搬出困難な場所に設置されており、処分に多額の費用がかかることが見込まれたため、会社の元取締役が設立した新会社に印刷機械類を売却して事業を事実上引き継いでもらい、会社については破産申し立てを行った。代表者に関しては、破産はせず、経営者保証に関するガイドラインに基づく債務整理を行い、弁済をしない内容(いわゆる「ゼロ弁済」)で債務整理が成立した。
ポイント
元取締役が設立した新会社に機械類を売却して事業を事実上引き継いでもらったことで、従業員の雇用を引き続き確保することができたと共に、本来発生していたはずの多額の明渡費用を節約して、スムーズに破産申立をすることができた。会社の資金と売掛金、機械類の売却代金等を原資として、従業員の給与及び解雇予告手当を支払うことができ、商取引債務も全額支払えたため取引先に迷惑をかけることなく廃業することができた。
また、破産申立後すぐに、廃業と機械類売却の経緯と合理性を丁寧に破産管財人に報告することで、破産管財人の理解を得ることができた。
代表者については、本来であれば同時に破産申立てをすべきところ、経営者保証に関するガイドラインに基づく債務整理を試みた。その結果、時間はかかったものの、金融債権者に対する弁済をしない内容(いわゆる「ゼロ弁済」)での債務整理の合意が成立し、代表者個人に関しては破産をすることなく債務を消滅させることができた。代表者の自宅は親族名義であったため、自宅を失うこともなく、もともと持っていた預金等もそのままで、破産申立を回避して事件を終了することができた事案であった。