代表者は犯罪に問われるのか-「はれのひ株式会社」の倒産-

最近,成人の日に晴れ着が届かなかった「はれのひ株式会社」の倒産は大きな社会問題となっています。同社はすでに破産の申し立てをしており,管財人が様々な調査を行っていきますが,同社の代表者が刑事責任を問われる可能性は皆無ではありません。
同じく最近でいえば,旅行会社の「株式会社てるみくらぶ」の代表者が詐欺罪で逮捕,起訴されています。では,企業の倒産に関して代表者ら経営陣が刑事責任を問われるメルクマールはどこにあるのでしょうか。

刑事責任になるケース

破産を予定しており,サービスの提供をなしえない(はれのひの場合では,着物を貸せない)にもかかわらず,代金を受領すれば,形式的には詐欺罪に該当する可能性があります。
もっとも,企業が破産する場合,破たん直前まで事業は続けられます。従業員には破産予定は知らされないので,破産予定を知らない従業員は,破たんの日までお客さんを受け入れ,代金を受領してしまうことになります。
破たん予定が外部に漏れてしまうと大きな混乱が起きるため,事前に破たん予定を従業員にも伝え,お客さんの受け入れを止める義務が経営陣にあったとまでは言えない場合が多いといえます。

そのため,中小企業の破たんにおいて,代表者が刑事責任を問われるケースは稀であるといえます。
例外的に,代表者個人に通常の役員報酬を上回る金員が流れているようなケースや破たん直前に特に積極的に資金を集めたようなケースでは,刑事責任を問われる可能性が高まるといえます。また,多数の消費者が被害に遭っているなどの場合では,世論が代表者の責任を厳格に問うべしという風潮になり,捜査が開始される傾向が強いように思われます。
他方,上場企業が突如破産するような場合は,それまでに粉飾決算などを行って,会社の業績を偽装していることがしばしばあり,この場合は経営陣が刑事責任を問われることになります。

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