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営業譲渡と破産手続による事業存続

 破産の前に営業を譲渡して,取引先その他事業そのものは存続させるという手法があります。
 
 この場合,事業を買い取る新会社(スポンサー)の下で,事業の再建が目指せ,また,代表者自身も新会社に勤務するなどして,生計を立てられるというメリットがあります。
 ここで新会社の経営者は,旧会社の経営者とは無関係な外部の資本であることが望ましいのですが,他方,旧会社の経営者の親族や旧会社の従業員であることもしばしばみられます。
 
 事業譲渡というと,大がかりなイメージがあり,中小企業といえども,工場があったり,従業員が多い企業向けの手法かと思われがちですが,相応の規模感のある企業だと,事業譲渡に際して支払われるべき対価が高額化し,かえって困難となります。
 
 事業譲渡と破産の組み合わせによる事業存続は,むしろ小さな会社に向く手続きであると思います。小さな会社こそ事業譲渡どのような会社が事業譲渡後破産というと次の特徴があります。これを見てゆくと,小さな会社こそ事業譲渡&破産の手続きはとりやすいことになります。
 

①事業に不可欠な固定資産がない,または少ない。

 旧会社に不動産などの固定資産があり,これが新会社に引き継がれるとなると,新会社は旧会社に対して支払うべき譲渡の代金が高額化してしまいます。そのため,不動産を買い上げる程度の資力のあるスポンサーが必要となってしまい,そのようなスポンサーはなかなか見つかりません。スポンサー探しをしているうちに,会社の体力がなくなってしまい,破産になってしまうこともあります。
 

②現金払いの仕入れが多い

 事業譲渡をして,新会社の下,事業をのこしたとしても,旧会社の手続きは破産である以上,どこかのタイミングで弁護士が介入し,債務の支払を止めることになります。ここにいう債務は銀行だけではなく,仕入や下請けなどの債務も含みます。銀行については,弁護士が介入し支払を止めても,クレームを言うことは殆どありませんし,もともと新会社は融資を受けることが考えにくいでしょうから,影響はありません。
 
 しかし,仕入や下請けの債権者が,旧会社に「引っかかった」状態で「新会社」と取引をしてくれるかは,分かりません。怒ってしまって,新会社とも取引をしてくれない可能性があります。
 仕入などが現金払いのケースなどでは,仕入先への不払いがないわけですから,新会社との取引も行いやすいということになります。
 

③リース物件が古い

 事業に必要なリース物件についても事業譲渡にあたっては,新会社に引き継ぎたいところです。しかし,リース会社が新会社にリース契約を引き継ぐかは,リース会社の与信判断であって,旧会社や新会社がリース会社の判断を拘束することはできません。
 
 リース物件が高価であったり,新品であった場合,リース会社はリース物件を引き上げてしまいがちですので,リース物件は古く,たとえば再リースになっているなどの方が,事業譲渡の際にはリースの引継が上手くゆく場合があります。
 

 

管財人はどのような点を気にするか

 事業譲渡後破産をした場合,債権者が財産の隠匿を疑うのは当然です。また,債権者の心理としても,「破産したはずなのに,社長ほか従業員が同じ事業を続けている」というのでは,納得が得られません。そのため,破産管財人も通常の破産事件に比べて厳しい目で破産前の財産処分をチェックするように思われます。
 

①資産の評価額より高価であること

 例えば,事業譲渡代金が200万円とした場合でも,旧会社から新会社に譲渡された資産の価値が200万円を上回るとき,破産管財人は不足分の支払いを求めてきます。上の例では,敷金が100万円,車両が150万円の値打ちがあるのであれば,旧会社は直ちに破産し,敷金を返してもらい,車両を売却する方が,債権者へ沢山配当ができることになります。そのような場合であれば,事業譲渡代金は200万円では足りないということになります。
 
 また,管財人によっては旧会社の営業利益の状況なども考慮し,安い金額での営業譲渡を問題にすることがあるので,注意が必要です。
 

②新会社の資金が旧会社から出ていないこと

 新会社が旧会社の事業を買い取るわけですが,事業譲渡の代金が,実は旧会社から出ていたということでは,問題があります。旧会社は直後に破産するのですから,新会社の事業買取資金を拠出するのではなく,その資金を残しておき,債権者に配当をすべきだからです。
 
 そのため,新会社を旧会社破産直前に設立し,事業譲渡を行う場合などは特に,新会社の資本金などが,旧会社や同代表者から出ていないことを資料とともに示す必要があります。
 
 たとえば,旧会社の代表者の妻が自己資金を出して,新会社を設立したような場合には,妻の預金通帳からの資金移動などを客観的に説明できるようにするべきです。
 

③新会社の資産が旧会社に入っていないこと

 新会社は取引先を引き継ぐのですが,新旧会社の営業は間断なく行われなくては,取引先に迷惑をかけてしまします。そのため,旧会社の廃業と事業譲渡は同時に行われるのですが,廃業時に残っていた売掛金は当然旧会社の資産であり,旧会社に入金されなければなりません。これが誤って新会社に入金されていると,後日,旧会社の管財人に新会社が精算を求められることになります。
 
 また,旧会社の仕掛品などについてもあくまで旧会社の資産ですので,事業譲渡によって新会社に移す場合には,譲渡価格の適正に十分注意されなければなりません。
 

④新会社との関係

 新会社の代表が旧会社の代表者の妻であるなど,親族間での事業譲渡があるような場合,管財人は安く事業を譲渡したのではないかと思いがちです。もっとも小さな会社の場合,親族以外から新会社の資本が出ることの方がレアケースといえます。そのため,新会社のオーナー・経営者が旧会社の代表者の親族であるような場合もやむ得ない場合が多いように思います。
 
 ただし,新会社の資金が旧会社から出ていないことをしっかり示していく必要があります。

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